(昔研究室時代に調べたマンボウについて、最近需要があるみたいなのでw
再掲します)
入手することのできた文献
(日動水雑誌→日本動物園水族館雑誌)
飼育、食物について
[ 1] 荒川好満,益田信之.マンボウの生態, 日動水雑誌,Vol.3.No.4,p95-97, 1961.
[ 2] 奥野良之介.マンボウの飼育例,日動水雑誌,Vol.7. No.4, P88-89, 1965.
[ 3] 西村芳愽・他.マンボウの飼育,東急油壷マリンパーク水族館年報,Vol.3, P66-69, 1971.
[ 4] 荒賀忠一,田名瀬英朋,森山惣一,太田満,樫山嘉郎.マンボウの飼育例とその生態の考察,日動水雑誌,Vol.15.No.2,p27-32, 1973.
[ 5] 辰喜洸,御前洋,宮脇逸朗.マンボウの飼育について,日動水雑誌,Vol.15.No.2,p33-36, 1973.
[ 6] 末広恭雄,堤俊夫.マンボウの飼育について.東急油壷マリンパーク水族館年報,Vol.5,6. pp.12-15,1972,1973.
その他
[11] 末広恭雄.マンボウの眼瞼について.東急油壷マリンパーク水族館年報,Vol.3, p.56,1971.
[12] 堤俊夫.マンボウ,フィッシュ・マガジン,Vol.8, No.3, pp.133-135,1972.
[13] 礒貝高弘.ヤリマンボウ Masturus lanceolatus の幼魚について,東急油壷マリンパーク水族館年報,Vol.?,pp.17-19,1976?.
[14] 山下欣二.マンボウの名称に関する歴史的考察,日動水雑誌,Vol.34.No.4,p80-83, 1993.
[15] 末広恭雄.魚の漢字と発音に就いて.東急油壷マリンパーク水族館年報,Vol.1, p.12,1968.
手に入らなかったもの
飼育、食物について
[ 7] 時岡隆.マンボウの食物,京大水族館月報,No.7, 1953.
[ 8] 谷津直秀.マンボウの食物,動雑26 (304),p91,1914.(記述は極めて短い.)
[ 9] 御前洋.マンボウの餌付け,マリンパビリオン,No.5, 1972.
[10] 御前洋.宮脇逸朗.飼育マンボウの死因について,日動水雑誌,No.6, Vol.14, 1972.
その他
[16] 小松崎三枝.まんぼう,理学界 Vol.3, No.8, 1905.
[17] 末広恭雄.改訂魚類学, 1961.
[18] Gregory, W. K. & H. C. Raven. Notes on the anatomy and relationships of the ocean sunfish(Mola mola), Copeia, 1943(1934?) (4) 145-151.
[19] Fraser-Brunner. The ocean sunfish (Family Molidae) Bull. Brit. Mus(Nat.Hist),Zool,1(16)89-121, 1951.
[20] Y, Suyehiro. A study on the digestive system and feeding fabits of fish. 日本動物学輯報, 1942.
[21] 矢部 博.ヤリマンボウの幼魚,日水会誌,16(2), pp.40--42, 1950.
飼育記録(1972 年頃まで)
文献 | 全長、体重 | 生存日数 | 餌 | 胃中に残っていたもの | 年月 |
[ 1] | 全長85cm | 21日 | イカ トビウオ | 未消化のイカ | 1960 年 |
[ 3]
| 全長95cm, 33 Kg 全長92cm, 33 Kg 全長91cm, 32 Kg 全長93cm, 34 Kg 全長92cm, 56 Kg 全長84cm, 30 Kg 全長110cm,25 Kg | 5日 13日 14日 19日 22日 24日 37日 | イカ クラゲ イカ クラゲ イカ クラゲ アジ イワシ アジ イワシ イカ クラゲ アサリのむきみ | イカ クラゲ イカ クラゲ イカ クラゲ アジ、イワシの小骨 アジ、イワシの小骨 イカ クラゲ アサリのむきみ |
1970 年
|
[ 4] | 全長72cm, 22 Kg | 47日 | 赤身魚肉(アジ、サバなど) 53% 白身魚肉 9.3% ケマンガイ、アサリ 33.3% イカ、イセエビ 4.4% | --- | 1972 年 |
[ 5] | 全長 49.6cm (幼魚) | 37日 | ヤドカリの腹部 アサリ アジの切身、ミンチ むきエビ 大正エビ | アサリ 7 個(胃2, 腸5) | 1972 年 |
※文献[ 6] に、
・ 鴨川シーワールド 79 日
・ 高知県桂浜水族館 121 日
という記録があります(1974 年)。この頃から、飼育期間がのびたのでしょうか。
自然での食性記録
文献 | 全長、体重 | 生存日数 | 胃中に残っていたもの | 年月 |
[1] | 全長 2.7m 全長 1.25m | 3日 2日 | イワシ、イカ アマモ、アオサ | 1960 年 |
[2] | 全長 115cm 約 84 Kg | 4日 | イカナゴ 200g | 1965 年 |
[3]
| 全長 40cm (複数尾) 全長 80--100cm (複数尾) 全長 2m (複数尾) 全長 2m | 2日以下 2日以下 (捕獲) (捕獲) | 未消化のエビの一種 カタクチイワシ、カニの一種 多量のクラゲ、など クラゲ、ハダカイワシの一種、イカの一種 | 1970 年 1970 年 1968 年 1968 年 |
[4] | 全長 85cm, 30 Kg | 4日 | メヒカリイカ(軟甲) | 1972 年 |
マンボウの食性は、まだよくわかっていないようです。昔からクラゲが主食
であると言われてきましたが、主食にするにはちょっと栄養不足ではないか、
ということだそうです。また、成長するに従って食性が変わるであろうことも
予想されます。
食性については、多くの文献で考察が行われていますが、ここでは文献 [ 6]
の考察を紹介します。(このページの記述は、あまり正確ではありません)
1.マンボウの顎骨は、発達が悪い。しかも体態は速い流れに適さない
↓
2.マンボウは、イワシ程度の魚でも捕まえられないと推定される
↓
3.プランクトン、クラゲ、イカなどが天然餌料と思われる
裏付けとして、
4.クラゲ切断に役立つと思われる特殊な咽頭歯をもっている
↓
5.さらに、長い腸は、肉食性ではないことを暗示している
↓
6.クラゲを食することは、十分考慮してよいようだ
ということで、クラゲを食べているのでは、ということだそうです。
クラゲを食することについては、疑問視されているのですが、
少なくとも、
・ 骨の多いものは食べられない
ことは確かなようです。
マンボウという名前について
マンボウという名前については、文献 [14] に詳しい説明があります。この
文献は、日本の古文に登場するマンボウ(とその別名)を調べたものです。
この論文で参照された文献は約 40 で、江戸時代が中心です。年代で言うと、
1469--1889 A.C. の間、だそうです。
ここでは、簡単に要約をご紹介します。
マンボウの別名
マンボウの他に、次のような呼び名があるそうです。
・ ウキキ
・ オキナ
・ マンザイラク
・ オキマンザイ
・ ナンボウザメ
・ シオリカ
・ シキリ
・ キナボ
・ マンホウ
・ ウキキサメ
ウキキ、マンボウがメジャーな呼び名のようです。
それぞれの名前の解説
※ 漢字には、古文書に読みが与えられていなかったものも、含めてあります
漢字と読みとの対応は、完全なものとは考えないほうがよい場合もありま
す。詳しくは、[14] をご覧ください。
ウキキ
東北地方に、昔からある名前。「浮き木」が語源で、流木のように水面に
浮いている様子をさしているとか。
「浮亀」と漢字で書かれているばあいは、亀の一種と考えられている場合
が多いのだそうです。漢字として最も多い「木査 魚/二文字」の 木査 は、
イカダの意だそうです(→ユキナメ)。
漢字:浮亀、浮木、木査 魚(/二文字)、宇岐岐、浮気、翻車魚、査魚、烏紀紀、
魚巨 魚差(/二文字)
ウキキサメ
前出のウキキを、サメの一種と考えていたため、この名があるようです。
マンボウも、皮がざらざらしているそうです。
漢字:ウキキに、サメとして、鮫、鯊の字を当てる
オキナ(ヲキナ)
雪魚(→ウキナメ)の別称(かなり曖昧)。オキナは、北海の大魚で、鯨類の
ことを指す場合が多いようです。
漢字:雪魚
オキマンザイ
万歳楽(→マンザイラク)から派生した名前。
漢字:沖万歳
キナボ
北海道でキナンボ、青森では、キナッポー、キノッポー。現在でもそう呼
ばれているようです。ウキキと同じく、「木の棒」の転訛だとか。
漢字:岐奈房
シオリカ
昔、石川、新潟の方でそう呼ばれていたということです。現在はクイザメ
という名前しかないそうです。ちなみに、クイザメは、「杭鮫」でして、
……ウキキとおんなじですね。(^^;
漢字:志於里加
シキリ
「尻切れ」の意で、生まれた言葉。鹿児島の方では、現在でもシキリ、シ
チャー(喜界島)と呼ばれているそうです。
漢字:止吉利
ナンボウザメ
「雪のふるみち」津村淙庵(天明八年)に出てくる名前。マンボウとキナボ
を混同して呼んだもの。
漢字:???
マンザイラク
マンボウが暴れたときに、
* マンザイラク
-------------------------------------------
* repeat twice
と唱えると静かになるところからこの名が付いたのだとか(マジ?(^^;)。
万歳楽は、「くわばら」などと同じ、厄よけの語。
オキマンザイと共に、相模、佐渡、安芸に見られる名前。ここからマンボ
ウが転訛した可能性もあるそうです。
漢字:万歳楽
マンホウ、マンボウ
西日本では、昔から広く通用していた名前だそうです。江戸の頃には、ウ
キキと共に、マンボウの標準的な名前になったようです。
語源には、二つの説があるようです(まだあるかもしれません)。
1.体が丸いから、「満方」。
マンボウの「マン」は円いのマン、ボウは魚の意から、という説も
2.子どもの持っているハスの葉の袋(萬宝)に形が似ているところから
漢字:満方(マンホウ)、翻車、翻車魚、満方魚、斑車魚、満肪など
ユキナメ
マンボウに雪魚をあてる文献が多い。ユキナメは、新潟の地方名から、
[14] の筆者が与えた名前。他にユキイカダ(雪筏)などの呼び名もあるが、
これは例によって、ウキキに通じる。オキナの項もご覧ください。
漢字:雪魚
中国語とマンボウ
翻車魚、斑車魚、牛魚(ギュウギョ)、魚巨 魚差(/二文字)などの漢字は、
中国の文献にある魚の名前のどれにマンボウがあたるか、当てはめたものなの
だそうです。
現在中国ではマンボウを翻車魚と書き、Fan-che-yu と呼ぶのだそうです。