(註:本文書はコンピュータ将棋開発者である私の個人的な表出であり、
コンピュータ将棋開発者の総意を表出するものではありません)
私はコンピュータ将棋を嗜む「へっぽこ」プログラマではありますが、
今日の将棋の棋士先生方とコンピュータ将棋の関係について、思うとこ
ろあり一筆執る次第です。
ここで話は飛んで時は遡ること30数年前、英国バーミンガム大学にお
ける、英英辞典編纂について見てみましょう。シンクレア教授と英コリ
ンズ社は共同で新しいタイプの学習英英辞典を開発していました。英英
辞典というのは、英国のlexicographer(辞典編纂者)が著した英語に
よるいわば英語の国語辞典のようなものですが、シンクレア教授とその
グループは電子化されたコーパス(言語資料)を活用した辞典を編纂し
ておりました。
グループはコーパスから語義の統計的な頻度と、語義に対応するコー
パスの使用例を自由に取り出せるシステムを開発しました。そして辞典
編纂者はそのシステムを使って「生きた」例文を辞典に掲載することに
成功したのです。この辞典の特徴である「フルセンテンスの語義」と相
まって、この辞典は1980年代、非常に成功しました。英英辞典COBUILD
の誕生です。コンピュータガイ(コンピュータを使う技術者)と辞典編
纂者(言語学研究者など)の共同の作業が、世に新しいタイプの辞典を
送り出したのです。
なぜ30年前の辞典の話をしたかと申しますと、今日のコンピュータ将棋
を取り巻く状況は極めてこの時の状況に酷似していると私は感じている
からです。辞典編纂者=将棋の棋士の皆様、コンピュータガイ=コンピュータ
将棋開発者と考えると、ああ成る程と、思う方もいらっしゃるかもしれま
せん。
私は、コンピュータ将棋と棋士先生の皆様との最終決戦が行われること
について、それは事の成り行きであると思いますし、いま非常にデリケート
な時期に来ていることを否定する訳でもありません。
ただ、私はいつの日か、棋士先生の皆様とコンピュータ将棋が華麗に
コラボレートして、今まで無かった将棋を創り上げる、そんな夢想をせず
に居られないのです。そう、30数年前のCOBUILD誕生の時のように。
これは夢物語なのかもしれません、実際には厳しい戦いが待っているの
でしょう。でも、私はこんな未来が来ることを願って止まないのです。
現に将棋を指す方がコンピュータ将棋に詳しい人を欲するように、コン
ピュータ将棋開発者もまた、高度な大局観をお持ちの棋士の皆様の手を
必要としているのです。
(文責kimrin)
純粋な気持ちを護り続けることが出来るのなら、必ず成し遂げられると信じます。
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